[yomi-otosi参加者]

第三者委員会が記者発表の際に配った資料を毎日新聞のwebサイトで読み、処分が妥当だったと結論づけた論理のずさんさに怒り心頭です。長くなりますが、書かずにはいられないので、ご容赦ください。

第三者委が三浦九段に対する出場停止処分を妥当とした理由はつぎの５点です。
１　三浦九段に出場停止の処分を下した当時、ソフト指の強い疑惑が存在していた
２　三浦九段が竜王戦に出場すると、大きな混乱が必至で、連盟に対する信頼や権威が傷つ　
　く
３　竜王戦開幕が３日後に迫っており、時間的余裕がなかった
４　三浦九段が口頭で休場の意思を表明したので、読売にも挑戦者の交代を打診し、了承を得ていたので、後戻りできなかった
５　他に取りうる手段がなかった

１について、事実経過を確認します。
　上記資料や谷川会長の記者会見からわかることをまとめると、次のようになるかと思います。今回の事件の発端は、７月に関西の報告会で久保九段が指摘したことが始まりである。７月２６日の対久保九段戦で、三浦九段が夕食休憩後３０分以上の間離席した（これは連盟に当日のビデオが残っていて、第三者委は、そのような事実はなかったことを確認しているそうです）、８月２６日、９月８日の各対局の際には、連盟の理事が三浦九段を監視していたそうですが、不審な行動はありませんでした。また、この対局はいずれも相手が丸山九段でしたが、丸山九段も対局していて不審な点は感じなかったそうです。１０月３日に順位戦の対局があり、ソフトと高い確率で三浦九段の指し手が一致したとされています。
この事実経過から言えることは、７月２６日に疑惑が浮上し、連盟がそれとなく調査をしたが不審な点は見つからなかった。ここまでなら疑惑は弱まったことになりますが、しかし、１０月３日の対局がソフトと高い確率で指し手が一致したので、疑惑が強まったということでしょう。
つまり、連盟が処分の根拠とした理由は、１０月３日の対局で、三浦九段の指し手がソフトと高い確率で一致したということだけなのです。
しかし、確率というのは、非常に多数回繰り返された場合に同じ事象が生じる割合を示しているもので、１００数手で終わる対局を１つだけ取り上げて確率を論じることはナンセンスです。また、連盟は将棋強者の集まりですから、ある程度ソフトと一致してもおかしいことではありません。他の棋士と比べて、三浦九段の一致率が格段に高いというなら疑惑もわかりますが、そのようなデータはまったくありません。
ということは、連盟は、合理的な根拠もないのに三浦九段を疑ったということになります。それ相応の根拠があって疑うならばともかく、根拠もないのに疑いを向けておいて、「強い疑惑が存在した」などと、よく言えるものです。
２　大きな混乱とは、いったいどんなことを想定しているのでしょうか。竜王戦開催中に文芸春秋に記事が掲載されることでしょうか。この場合、世間が多少ざわめくことはあるでしょうが、収集困難なほど大きな混乱は考えられないでしょう。対局だって予定通り消化できたのではないでしょうか。仮に、マスコミが騒いだとしても、それにきちんと対応することこそが連盟の役割だったのではないでしょうか。
棋士に、あらぬ疑いをかけて挑戦権をはく奪してしまう連盟と、マスコミのざわめきに毅然と対応する連盟と、信頼や権威を守れるのはいったいどちらでしょうか。
３　時間的余裕がなかったという弁解は、三浦九段の疑惑に相応の根拠があるときに成立する弁解でしょう。すでに述べたとおり、疑惑自体に根拠がないのですから、時間的余裕がなかったというのは成り立たない弁解です。
４　どうして、後戻りができないのか、私にはわかりません。第三者委の資料にも、後戻りできない理由は書いてありません。
５　他の選択肢も、三浦九段を挑戦者とするという当たり前の選択肢がありました。

私の読む限り、第三者委の資料、結論は、中立の立場から出された結論とは見えません。どうみても、第三者ではなく、連盟の代理人です。第三者と称して中立を装うのは、将棋ファンに対する欺瞞以外、なにものでもありません。

また、今回の発表を、証明できないだけでダークだという方は、「潔白」ということをどうやったら証明できるのか、よく考えてみてください。それは、三浦九段に不可能を強いていることなのです。
と同時に、疑惑をもたれていないすべての棋士に対しても疑惑を否定しない、きわめて失礼な発言です。

　　　

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